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★工作の基本と、基板ユニットの組み立てから完成までの手順★
1)パーツの知識 (この項目は基板ユニットを入手した人には、とりあえず不要です--本当は必要。2)ハンダ付けから読んでも構いません)
1. トランジスタ2)ハンダ付けふつうのトランジスタには3本の足があります。どんな役割なのかは置いといて、コレクタ(C)、ベース(B)、エミッタ(E)という名前なので覚えておいてください。図面や解説などでは括弧内に書いたアルファベット、C・B・Eで表すことが多々あります。
3本の足の配置が、ちょっと面倒。最近(といっても、ここ30年以上!)ポピュラーなシリコン・トランジスタだと、型番が書いてある面を正面にして、左からE-C-Bの順になっています。右の図がそれ。小さくて見にくければ図面をクリックしてみて。別窓で大きな図が開きます。このページの画は全部そうなっています。
ところが前世紀の余り物=ゲルマニューム・トランジスタでは順番が違います。ゲルマは時代によって様々なパッケージがありますが、共通しているのは「コレクタ・マーク」という印が本体に付いていること。Cの字、丸いペイント、三角、その他。この印がある側の足がコレクタです。そして真ん中がベース、もう片方がエミッタです。順番がC-B-Eでシリコンとは違うので、安易な「差し替え」はできません。
以上は、あくまでも原則です。海外の石には(国産にも?)例外がありますから、不安なときはグーグったりして調べてから使いましょう。これが結構面倒。まず、種類によって「極性」があるものと無いものとがあります。電解やタンタルなどには極性があり、セラミックやフィルム(マイラなど)は極性がありません(さらにややこしいことに、無極性電解もある)。新品の状態でなら、極性の有無は簡単にわかります。右図は電解コンデンサですが、2本のリードに長短があります。長短があれば、まず有極性と思ってよく、長い方が+。電解の場合、本体には−の表示があります。タンタルでは、本体に+表示と−表示の両方があります。
極性はとても重要です。+と−を間違えると、最悪の場合「爆発」します。特に昨今のChinaな製品は、実にあっけなく吹き飛ぶ! メーカー補償などありませんから要注意。足の長さが同じセラミックやマイラに極性は無く、どちらの方向に付けても構いません。その意味では扱いやすいパーツなのですが・・・。
容量の表示方法が一般的とはいえません。103やら472やら、そのまま読むと意味不明。もちろん、中には「0.01」「0.0047」など素直に書いてある製品もありますが、これは少数派。
3桁の数字のうち、前2桁が「実数部」なるもので、最後の1桁が「乗数部」というのだそうで、たとえば103なら、「10」×10の「3乗」を表わし---はい、そこの人、逃げないで! それは「10000」になって、単位はpF(ピコ・ファラッド)、すなわち10000pFということ。このままでも正解だけど、単位を変えて10nF(ナノ・ファラッド)あるいは0.01μF(マイクロ・ファラッド)とするのが普通です。
これ、別に数学の問題ではなくて、小さなパーツの表面に少ない桁数で値を表記するための手段。慣れてしまえば違和感はありませんが、慣れていない人のために、秋月キットなどでは説明書に「103=0.01」とか書いてあります。コンデンサには「耐圧」というものがあります。2本の電極(リード線)の間にかけられる最大の電圧のこと。一瞬でもこの電圧を超えると、コンデンサの安全は保証されません。つまり、吹っ飛ぶ、爆発する、燃え上がる、破裂する、その他いろいろ、凶器に等しい状態になります。人間が怪我をするのに充分な威力があるので滅茶苦茶な使い方はやめましょう。(どんなパーツでも耐圧(耐電力)オーバーは危険ですけど)
電解コンデンサの場合、耐圧は本体に「16V」とか書いてあります。製作記事などで耐圧が指定されていたら、それ以下の製品は使わない方が賢明。たとえば「22μ25V」という指定なら、22μ35VはOKですが、22μ16Vはダメ、といういことです。ただし、耐圧が高くなるとパーツのサイズも大きくなる傾向がありますので、基板に乗るかどうかも確かめてください。むやみに「高い耐圧ならいい」ということでもありません。
耐圧表示の一種に「WV」というのもあります。WVはワーキング・ボルト(ボルテージかな?)のことで、「この電圧までなら正常に働く」の意味。厳密には絶対最大定格での「耐圧」とは違いますけど、実用上は同じ「耐圧」と考えて構いません。そのほうがむしろ安全です。
セラミックやマイラには耐圧が書いてありません。一般に「何も書いてなければ耐圧は50V」のようです。エフェクタの世界では、AC電源内蔵の機材を除き、50V以上の電圧を扱うことは皆無に近いため、セラミックとマイラの耐圧は考えなくてもいいでしょう。一般的な「1/4W型カーボン抵抗」について説明します。もっとも入手しやすく、100本で100円、適度なサイズで老眼にも優しい! 電源回路や特殊用途を除いて、このタイプの抵抗で充分です。一部世間には金属皮膜抵抗のほうが「音が良い」と信じている人もいますが、まったくの迷信。惑わされないように。
右図のように、3本+1本の色の帯で抵抗値と精度を表わしています。まず、金色が右にくるように見てください。金は「精度5%」の意味です。といっても最近の抵抗は精度が良くなり、金色でも、ほとんどが2%以内に収まっています。金属皮膜などの精密抵抗では、金色の代わりに茶色だったりします。図の一番下の「カラーコード」でおわかりのように、茶色は「1」です。ですから、もしも茶色なら、その抵抗は「精度1%」だとわかります。ただ、ほとんどの1%抵抗は、左側の色帯が3本ではなく4本です。そうなると以下の説明と違ってきますので、ここでは1%抵抗は扱いません。
3本の色帯の解読法はコンデンサの読み方と基本的に同じです。ただ数字の代わりに色で表わしているだけ。下のカラーコードが対応表です。色帯は左から読みます。たとえば「緑茶橙」なら、これは513です。「51」が実数部で、「3」が乗数部。コンデンサのところでは難しく書きましたが、要するに「51」にゼロを「3」個付ければいい、ということでもあります。51000ですね。で、単位はΩ(オーム)です。つまり「緑茶橙」は51kΩだとわかります。
カラーコードは完全に覚えていれば便利ではあるものの、無理して暗記しなくても全然構いません。使っているうちに自然と覚えてしまいます。私は「暗記」や「学習」が大嫌いなので、最初のうちは、基板に抵抗を付ける前に、必ず1本ずつテスターで測っていました。茶黒橙や茶黒黄など、何百回測ったことか! これで覚えました。今では老眼が進んで、ミジンコメガネで抵抗を見なければなりません。このほうが遥かに面倒ですよ。
右図の抵抗値の例はFazz Factuallyに使われる全抵抗です。ついでながら、どうして抵抗にはカラーコードなる「符丁」を使うのか?について。数十年前までの製品では、本体にしっかりと「10kΩ」とか書いてあって明快かつシンプルでした。しかし実装するときには、抵抗値の表示された側を上にしなければならず、寝ぼけて抵抗値が見えないように取り付けてしまうと、翌日から厄介なことになりました。点検ができないのです。また、経年変化で印字が薄れたり消えたりしたら、もうアウト。いったん取り外して抵抗値を測る苦難が待っています(真空管時代は、抵抗のリード線を端子に巻き付けてからハンダ付けしたので、取り外すのも大仕事)。そんなこんなで全方向から見えるカラーコードの色帯にしたのだと言われています。
▲ページ上の2機種を作るだけなら、これだけのパーツ(とジャック、以下に説明)で大丈夫なはず。必要なら今後追加します▼
3)ケース加工自転車の乗り方とハンダ付けは、一度覚えれば忘れません。そして、覚えるのはハンダ付けの方が簡単。本当は、上手な人に教えてもらったり、凶エフェのセミナに来てもらえれば30分でマスターできるのですけど、ここでは遠隔操作なので、リクツから入ることにしましょう。
まず「ハンダはノリではない!」(これは数百回言ってます)。コテにハンダをてんこ盛りにして、付けたいところにくっつけてゴシゴシ---最悪です。明日の朝になっても絶対にくっ付かないし、パーツは熱で壊れ、基板パターンは剥がれてしまいます。いわゆるこれが「ミュージシャン風ハンダ付け」。
発想を変えてください。ハンダごては「加熱器」なのです。ハンダを流したい部分を暖めます。そしてハンダは、加熱された部分に流し込まれる合金。コテとハンダの役割をしっかり把握しましょう。
先日、やってみて面白かった遊びがあります。2ミリ径のしんちゅう線を立てておいて、上から3ミリだけ、きれいにハンダを流す(ハンダメッキする)というもの。結構難しいですよ。これを例にとって説明しましょう。
まず、ミュージシャン風にやると、ハンダは線にくっ付かずにポロポロ落ちてしまいます。完全な加熱不足です。正しい方法とは、最初にコテ先をしんちゅう線にしっかりと接触させます。線に熱を伝えるわけです(このとき、コテ先と線の接触面積を増やすため、少量のハンダをコテ先に付けておくのも可)。
しんちゅう線に熱が伝わったと思ったら、糸ハンダ(私たちが常用しているもの)をコテ先と線の接触部分にくっ付けます。そうするとハンダは線に流れて「ハンダ付け」ができます! このとき加熱不足(加熱時間が短い)だと、ハンダは線の先端にしか流れず、無理に流し込むと先端でダンゴになってしまいます。逆に加熱時間が長すぎると、目標の3ミリではなく、ずっと下の方まで流れてしまいます。ぴったり3ミリだけ流すのは(それも最初の1回で!)名人の技でしょう。コテで加熱する時間は、ハンダ付け対象の「熱的な大きさ」によります。2ミリ径のしんちゅう線は、かなり大きなものに入ります。
初心者のハンダ付けを見ていると、どういうわけかコテ先をハンダ付け部分にくっ付けるのを怖がっているようです。燃えちゃう!と思うのでしょうか? その結果、加熱不足の「ダンゴ」を量産してしまいます。コテもハンダも所詮は道具。怖がってはいけません。しんちゅうの棒だろうとプリント基板だろうと、ハンダ付けの基本は変わりません。コテで熱して、そこにハンダを流す、それだけ。ただ、基板のパターンは込み入っていて、最小の間隔は1ミリほどですので多少の注意は必要です。
まずいハンダ付けの典型は「いも」と「てんぷら」(本当にそう呼びます)。図は基板に抵抗の足をハンダ付けするところ。加熱不足で(おっかなびっくりで)でき上がるのが左の例。これを「いも」といいます。基板の真上からだと、一見付いているように見えますが、実はリード線にしかハンダは付いていません(引っかかってる、と言うべきか)。パターンとつながっていないので、もちろんNGです。さらに、このハンダ部分に触れると取れてしまう、つまり抵抗リード線にも付いていないハンダ付けを「てんぷら」と言います。コロモを被せただけですから。すべては「加熱不足」です。
適度な加熱で適量のハンダを流せば、真ん中の絵になります。富士山の形。これが理想形です。一概には言えませんが、一番多い15W〜30Wのコテでなら、2秒〜3秒の加熱で、この程度にハンダは流れる、と思ってください(基板パターンの場合)。
ハンダを流す量も問題です。基板パターンの間隔は狭いので、どうしても隣のパターンまで加熱しがちです。これは仕方ありません。でも、その状態でハンダを流しすぎると「ブリッジ」になってしまいます。右の絵。あるいは加熱しすぎたのかもしれません。いずれにしても、もちろんNG。隣とショートしていますから。こうなってしまったらコテで少し長めに再加熱して、すかさず基板自体を机にでも叩きつける(壊しちゃダメですよ)と余分なハンダが振り落とされてブリッジが解消することが多いです。ハンダ付けが最初から上手な人はいません。苦闘してください。すべては慣れの問題ですからエフェクタを5台も作れば悩みは解消するでしょう。
右図は Fazz Factually のパーツ取り付け図。基板パーツ面の様子。もちろん裏側はパターンです。隣が完成した基板(左右が逆になっていてごめんなさい)。基板サイズは約26ミリ×31ミリと小型です。小さ過ぎる基板は作りにくいものです。しかし今回は基板をガムテープや絶縁テープで巻いてケース内に封じ込める作戦なので、このサイズでも致し方なし、ということです。(最初に自分用に作った基板は18×25で、製作はストレスだらけでした)
パーツをハンダ付けする順番にはセオリーがあります。@背の低いパーツから、A熱に強いパーツから、が原則。どちらかと言えばAが優先です。理由は・・・・・やってみればわかります。
右図の例だと、順番は抵抗、積層セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、シリコン・トランジスタ、ゲルマ・トランジスタ、の順が普通でしょう。なお、話は外れますが、「積層セラなんて音が悪いのに」と思ってる信心深い人に、、このマシンは音を「発狂」させるものですから、コンデンサの選択など枝葉末節の話です(ファズ全般にいえます)。また、コンデンサを換えて「音の違いを聴く」ような種類のマシンでもありません。悪しからず。
さて、抵抗には極性がありませんから取り付け方向は自由です。ただし、後で点検しやすいように第1色帯の向きを合わせておくことをお勧めします。上から下、左から右、のように。0.1の積層セラも方向はありません。強いて言うなら、104の文字が他のパーツに隠れないような方向に取り付けます。これも後々の点検用です。なお、ハンダ付けが終わってあまった(パターン面から飛び出している)リード線は、なるべく短く切り詰めておきます。
電解コンデンサには極性があります。逆に付けたら危険。
シリコン・トランジスタ(Si)は、本体の平らな面が図と同じになる向きに。それでE-C-Bの並びが整います。この基板に限って、トランジスタをなるべく基板に押し込むように、頭が電解コンデンサと同じ高さになるようにしましょう。ケース内に実装する際、基板の体積を小さくしたいからです。
ゲルマニューム・トランジスタには細心の注意を。なにしろ貴重品なので付け間違いの無いように。シリコンに比べて熱にも弱いため、最短時間でのハンダ付けを。といって、てんぷら・いもは論外です。ケースへの実装を考えて、頭の位置をなるべく低くし、基板に対して垂直に取り付けましょう。もしも極端に傾いて取り付け、ゲルマの本体が他の金属部分と接触するのも好ましくありません。
全部のハンダ付けが終わったら、あらゆる角度からチェックし、ハンダ付けは正常か、個々のパーツの取り付け位置は正しいかを確認します。できれば、翌日もう一度確かめると良いかもしれません。
ケース内の、VRやスイッチへのハンダ付けについては、5)で説明します。
4)新たに考えた穴位置決めの方法 & パネル装飾の方法機材作りで一番手間のかかるのがケース加工。知ってました? 基板作りは慣れれば速くなりますがケースだけは時間短縮できません。慣れて上手になっても、それと同時に精密加工に走るので所要時間は変わらない(増える?)。ここではケースを加工するための最小限の工具と、いくつかのコツを紹介します。
1. 必要な工具
センターポンチ:
穴あけ位置のセンターをマークするのに使います。先端をセンターに合わせ、ポンチを金槌で叩くという原始的な方法。でも慣れれば1秒に3発の早打ちも!(遊ばないでね)。金槌は小さめのほうが良いみたい。穴あけ位置に、ほんの小さい凹みをつけるだけでいいので、重たい金槌では力のコントロールがやりにくい。パネルや基板を壊しては元も子もないでしょう。
センターポンチにはいくつかの種類とサイズがあります。写真の黒い種類がお勧め。ちょっと安い銀色のものもありますが、先端が鈍りやすいので(経験上)長持ちしません。サイズは、私は「100mm」を愛用しています。ドリル:
慣れないうちはハンドドリルを推奨します。どっちみち1個は持っていなければならない工具。最近は国産が死滅してChinaな製品ばかりですが、それほど「ハズレ」は無いようです。サイズは2種類。写真のものは「大」です。どんなサイズでも構いません。使い方こそが問題ですから。ドリルの刃:
刃は0.1ミリきざみで、あらゆるサイズがあります。しかし板金屋でも始めるのでなければ全部は要りません。右の写真はお勧めの6種類。この中の4本を持っていれば、とりあえずの工作はできます。クリックすればサイズも見えます。
左の1ミリ、1.5ミリ、2ミリは以下に書くように、ケースにあける最初の穴=道穴用に使います。細いほうがいいのですけれど、慣れない人は1ミリ刃を確実に折ってしまいます。1.5ミリでも危険かも。2ミリならまあ大丈夫かな? ということで、腕前に合わせて選びましょう。「折っちゃう」ことも考えて、2〜3本買っておくと安心でしょう。
3ミリはLEDの穴を開けるのに使います。他のサイズでは代用できません。3.2ミリはビス穴用です。この2本、わずか0.2ミリの違いですが、まったく別物と思ってください。4.2ミリは、やはりビス穴用です。そして次に説明するリーマを通すためにも使います。
この他のサイズでも、気に入った?のがあれば買っておきましょう。ただし必ず「金工用」を選ぶこと。木工用では刃がアルミに負けてしまうことがあります。リーマ:
小さな穴に入れて、右に回すことで穴径を拡大する工具。写真は「4-16」というタイプです。数字の意味は「4ミリの穴を、最大で16ミリまで拡大」ということです。なので、このリーマを使うために、4.2ミリのドリル刃が要るわけです。しかし最大で16ミリだと、フットスイッチの12ミリ穴がきれいに開かない場合もあります。そこで、私はもう1本「5-20」というリーマを使っていて、4-16で適当な大きさに拡大したら5-20に換えています。
リーマは安くない工具なので、財布と相談しながら、どんなサイズを買うか決めましょう。探せば「3-20」のような万能型もありますが、、、このように拡大率が大きなリーマは、使うのに力が必要で、力を入れればセンターが狂いやすい、といった欠点があります。
リーマの使い方にはタブーがあります。回してもいいのは右回転だけで、何があっても左に回してはいけません。刃が欠けます。リーマを使っていると時々刃が食い込んでロック状態になります。脱出しようと左回しをしたくなりますが、ダメ! 右回しで切り抜けてください。2. ケース加工の下準備
右はFZ-1、3V版のパネル加工図。図をクリックすると大きなのが出てきます。説明するまでもないですね。ページ頭の写真と同じ、タカチのTS-1Sを使った場合の穴あけ参考図。他のケースを使ったり、自分なりの改造版を作るときには「この限りにあらず」になります。雑誌などの製作記事でも見かける図面ですが、私の図面も含めて、無警戒に信じてはいけません。自作は「自己責任」であり、図面どうりに作って失敗しても、誰も責められないからです。
必ず自分なりにチェックしてください。具体的には、まずパーツが「取り付けられるか?」。たとえば、この図面ではフットスイッチがパネルの下端から28ミリのところに付くことになっています。スイッチは奥行きの長いパーツ。本体や端子がケース底板に触れませんか? 実物をケースにあてがって調べましょう。VRはリアパネルの下から20ミリがセンターになっています。TS-1Sでは、底板とパネルを組み合わせるために、底板が10ミリ立ち上がっています。VRシャフトとぶつかりませんか?
そんな具合に、全パーツについて慎重にチェックします。その次に三次元的想像力を働かせます。この図を例にとれば、右側のVRと側面のジャックがケース内でぶつからないか? 多分ぶつからないでしょう。でもVRを右に移動すれば完全に衝突します。このような「事故」は、ケースをルックス優先で設計すると往々にして起こります。パーツには「大きさ」があるからですし、複数の物体が同一空間に存在することは不可能だからです!穴あけ位置がOKとなったら、パネルに線を引いて位置決めをします。市販のほとんどのケースには、表面保護のためにビニールが張ってあるかセロファンで包まれていますので、その上に極細の油性マーカーで線を引きます。ビニールやセロファンを剥がすのは最後の最後にします。ここまでで下準備は完了。
3. ポンチ打ちとドリル
あけるべき穴の中心にセンターポンチを打って、金属面をほんの少しだけ凹ませます。ポンチの先端が鋭いのはピンポイントに凹ませるため。ドリルの刃の先端はこの凹みに誘導されます。
ポンチ位置の精度が、穴位置の精度を決める最大の要素になるので、息を止めて打ってください。どのくらいの力で打つかは、金属の硬さによりますが、アルミに打つなら、軽い感じでいいでしょう。
ポンチを持っていない人、騒音を立てられない人は、ポンチの代わりにキリが使えます。ドライバーセットのキリでも充分。穴の中心になる箇所にキリの先端を合わせ、垂直に、回すように押せばOKです。ちゃんと凹みますよ。プロの板金屋さんでもない限り、ポンチだけで7ミリ径や9ミリ径の穴を、ドリルで一発であけるのは無理。そこで、最初に「道穴」をあけます。道穴は細いほど工作精度が上がりますが、ドリル初心者が1ミリの刃を使うのは「折ってください」でしょう。1ミリ刃は簡単に折れます。慣れたら1ミリにするとして、最初は2ミリか1.5ミリをお勧めします。それでも折る人はいると思いますが。。刃は結構高いのです。
刃を折らないコツはただひとつ、ドリルを常に垂直に保つこと。ドリルをホールドする左手は、ひたすら垂直を保つことに使います。右手で回転させると、どうしても垂直から外れてしまいます。外れ方が大きければ、すなわち刃が折れる結果になります。また、細い刃ほどドリルを下に押し付ける力を緩めなければなりません。強く押せば、それだけでも折れます。
すべての穴の道穴をあけてしまったら、3ミリ刃で道穴をあけなおします。LEDの穴は3ミリなので、これで一応完成です。VRやスイッチの、ジャックの穴も、いったん3ミリであけます。何度も同じ穴をあけなおすみたいで不合理な気がするかもしれません。でも、きれいにケース加工しようとするなら手間を惜しむべきではありません。
ビス穴のある機材では、この後に3.2ミリの刃でビスが通る穴をあけておきましょう。
次は4.2ミリの刃でLED以外の穴をあけます。ドリルは簡単に回るはずです。ただ、穴が貫通する直前に、一瞬重くなります。ここが肝心で、回転が重くなった、とか、刃がロックしたなどの場合にも、ドリルを絶対に逆回転させてはダメ。刃こぼれしたり、ますますロックしたり、ときには刃が折れてしまいます。ここは気合で乗り切るしかないのです。
これでドリルでの工作はおしまい。リーマでの力仕事に移る前に、3.0や3.2の穴の仕上げをやっておきましょう。必要な工具のところでは書きませんでしたが(必需品ではないため)、「バリ取り」という小さな工具が便利に使えます。でもこれは高価なので、8.0ミリ〜10ミリの中古ドリル刃でも代用できます。
3.0の穴の表と裏を指で触ってみてください。なにかひっかかりませんか? 金属のササクレがあるはずです。これがバリ。バリ取りか太いドリル刃を穴に垂直にあてて、くるっと軽く右回転します。これでバリは取れるはず。ケースのアルミ素材が柔らかい時には、もう少し強く押し付けながら右回転すると取れるはずです。ただ、押し付けすぎると穴の周囲を削ってしまいますのでほどほどに。4. リーマ
穴に垂直に差し込んで、力を加えながら右回し、が鉄則。垂直が保てないと穴のセンターはどんどんズレます。押し付ける力が強すぎると刃がロックし、穴が正円ではなくなります。力加減はパネルの素材や板厚で変わりますので、やってみなければわからない(頼りないマニュアルですね)。ですから、いきなり力を加えず、パネル素材のご機嫌を伺いながら作業すべきです。
穴あけ図面の「穴径」は、ただの参考です。7.2φなどと書いてあっても、そもそも0.1ミリ単位で直径を正しく測れっこありません。で、一番原始的ながら確実な方法を採りましょう。そこに付くパーツ(VRやジャックなど)を用意しておいて、頻繁にあてがってみます。リーマで拡大しながら、ちょうど良い穴径になったら完了。これが一番です。拡大しすぎると悲惨ですよ。パーツ取り付けのセンターが狂ったり、ひどい場合は取り付けナットも締まらなくなります。こればっかりは一度や二度泣いてみないとわからないかも。パネルの素材にもよりますが、リーマを使った後にはバリが盛大に出ます。かならず除去してください。モノの本には「棒ヤスリで削る」などとあります。まあ各種の棒ヤスリを持っていて、忍耐力満点の人には向いている方法。少なくとも私向きではありません。
少々のコツは要るしリスクも皆無ではありおませんが、バリをリーマでゴソッと取る素敵なテクニックがあります。
右図のようにリーマを45度〜30度の角度で穴に入れます。リーマの刃先の方を支点にする感じで、少し力を加えながら右回転。回転は最大で180度まででしょう。この名人芸をマスターすれば大きなバリも恐るるに足らず。・・・・・なんですけれど、欠点もあります。パネルの裏側に新しいバリを作ってしまうこともあります。そうしたら裏からリーマ。次は表からもう一度、なんてやってると穴のエッジが汚くなりますよ。やはり適当なところで棒ヤスリの出番にしましょう。リーマでのバリ取りは大きな穴に限ります。4.2ミリ以下の穴には、3.で書いたバリ取り道具や大きなドリル刃を使う方法が向いています。
5)ケースにパーツを取り付けるページ頭の Fazz Factually は、当初、完全に「お遊び」で作り、公表する気もありませんでした。サウンドの滅茶苦茶さからして、ケースもド派手にしたかった。といって、何日も掛けてスプレーとマスキングテープで頑張る気力はなく、何か良い方法は・・・で思いついたのがタック紙に印刷してケースに貼り付ける方法でした。グラフィックソフトなら奇妙なデザインもできますし、CADデータと合わせれば穴あけ位置も決められます。我ながら名案ですねぇ。
右の絵をクリックすると原寸のデザインが出てきます。それを剥ぎ取って使ってください(上の写真とは少し違っています。原因は、HDDがクラッシュして最初のデータが消えてしまったため。今度はパンダバージョンにしました)。
この工作に必要なものは以下の通り、
プリンタ・・・・・カラー印刷できれば何でも可。データは300dpiですから高性能な機械は要りません。
普通のコピー用紙・・・・・穴あけ位置を決めるのに使います。
タック紙(切れ目のないもの)・・・・・ケースに貼り付けます。
フィルムラベル用紙・・・・・透明なタック紙。印刷はせず表面保護に使います。なお、ケースはタカチの TD-9-12-4 指定で、これ以外のケースでは使えないと思ってください(原版の妙に細長いケースは、スイッチを踏むスペースがなく、とても使いにくいです。エフェクトのオン/オフ表示LEDも不要でしょう。ま、個人的な感想ですが)。
最初に、普通のコピー紙でデザインを印刷します。縮尺は必ず100%で、余白設定ができるなら10ミリ程度にしましょう。印刷されたデザインの横幅は11センチのはず。OKならカッターで余白を全部切ってしまいます。
ケースにセロテープで固定。左右の寸法が少々足りません。それでいいんです。左右の余り部分が同じ幅になるように、中央に紙を貼ります。このとき、VRの5つの穴のセンターが、パネルの端から13ミリくらいになるようにします。どうせこの紙は、いわば型紙で、寸法を出すだけのものですから、VRのセンターどうしをつないだ線を引いたほうが、水平がわかって楽です。
もうひとつ、フットスイッチのセンターから、INとOUTの両方に向けて直線を引きます。VRの線と平行になるようにしてください。そして、その線を紙の外側、つまりサイドパネルまで延ばして、線上に入出力のジャック位置を決めます。サイドパネル上下寸法の中央にしておけば無難でしょう。これで5個のVR位置、フットスイッチ位置、2個のジャック位置が決まります。あとは「3)ケース加工」にしたがって穴あけをしてください。
ペイントをしたい人は穴あけが全部終わってからどうぞ。私は価格の安さと乾きの速さからプラモデル用のスプレーを使っています。なお。スプレーするときには、穴あけした箇所のケース裏側にマスキングテープ(ガムテープでも可)をピッタリ貼っておいてください。ペイントが裏側にまで回り込むと、塗料が絶縁体になってVRやジャックがケースと接触しなくなり、これはノイズ発生の原因になったり、最悪ではパワー・オンしなくなります。
ケースにタック紙を貼り付けます。タック紙を印刷し、余白を切り取ります。これを型紙と同じ位置に貼ればいいのですが、方法は試行錯誤してください。どのみち一発勝負です。剥離紙を切れ目から半分ずつ剥がして貼るとうまく行くでしょう。穴位置合わせは、照明に向けてタック紙を乗せたケースを透かして見ます。左右方向はシビアですが、縦方向は2ミリくらいずれても問題ありません。縦方向にタック紙が余るはずです。ケースに沿ってきれいに切り取ります(次のラベル紙を貼らない場合は、切らずに内側に折り込む)。
タック紙には多くのタイプがあります。表面がビニールのような感じで汚れが付かないものなら以上の工程で最後です。でも、紙製のタック紙だと簡単に汚れてしまいます。そこで表面をコーティングしましょう。方法はいくつかあって、イラストなどの表面保護用のスプレーを使う(スプレー、高いです)、多少シミるのは気にせずにクリアラッカーをかける、透明ビニールを貼り付ける。私は最後の方法にしました。裏がノリになった透明ビニールは業者用にはたくさんありますが、A4判1枚で小売している製品を私は知りません。ホームセンターなどで発見できたらそれを使ってください。発見できなければ、防水性に疑問は残るものの、フィルムラベルを使うしかありません。プリンタ用紙を扱っている店で手に入ります。
フィルムラベルを幅113ミリ、長さ190ミリに切ります。それをケースにズレを最小にして貼り付けます。かなり神経を使う作業。印刷したラベルより幅が3ミリ広いのは、左右に1.5ミリずつ余分にカバーするためです。これがズレると印刷面が保護されなくなります。また透明フィルムを貼るときには、気泡が入らないようにゆっくり定着させなければなりません。方法としては、まず中央を接着させて、押し広げるように接着面を広げます。買ってきたタックフィルムは余分にあるはずですから、事前に他のものに貼り付けて練習することをお勧めします。
フィルムの上下は余るはずです。切ってはいけません。ケース内側に折り込んで貼り付けましょう(切るとそこから剥がれてきます)。
最後にVR穴とフットスイッチ穴をカッターで切り抜いて完成。かなり神経質な作業ですね。でもメリットは充分。仕上がりはとてもきれいです。
見た目を美しく、しかも耐久性充分に仕上げるには、ジャックのネジ穴の”飛び出し”も避けたいところ。そこで「パーツ取り付けのコツ」を説明します。6)配線のコツなど
右図は、いわば基本形。VRなどをパネルに取り付けるには2個のナットを使うべし! 要するにパネルをナットでサンドイッチにして止めるのです。パネル前面側には平ワッシャを入れます。こうすると、たとえばジャックのネジ部を”どれだけ飛び出させるか”とか、”VRシャフトの長さ調整”とか、細かいワザが使えます。図で「内ナット」「外ナット」と色を変えていますが見やすくするためで、ナットは内・外とも同じものです(スイッチは内と外が違うこともある)。
図の例だと、もしVRをパネルから飛び出させたければ「内ナット」をVR側に回して締め直します。つまりネジ山がある限り、その寸法だけ前後移動ができるのです。便利でしょ?
スイッチ類を買うと、ナット2個、平ワッシャ(and/or)スプリングワッシャ1個が付いてきますので、そのままで右図の止め方ができます。でもVRやジャックをには、平ワッシャとナットが1個ずつ付いてくるだけ。ちょっと足りないのでネジ屋で「ボリュームナット」を買い足しましょう。VR(エフェクタに多用する16ミリ径のVR)用には「7φ」のナット、ジャックには「9φ」のナットが使えます(絶縁型ジャックは11.5φ)。買うときは「まとめ買い」すると安くなります(知らないうちに使っちゃいます)。ダイキャストケースなど肉厚のケースだと、VRでは内側のナットが入りません。そんな場合は入れなくて構いません。その代わり、と言うわけではありませんが、VR本体のネジ山近くにある小さな突起を取っておきましょう。私たちの工作では、この突起はほぼ不要ですし、ときには邪魔になります。ペンチではさんで、VRシャフトと反対の方向に折れば簡単に取れてしまいます。(このヘソは、量産機器などでナットの締めが甘くなった際にVR自体がカラ回りしないように、パネルに小さな穴をあけて、そこに差し込んで固定するためのもの。要らないですね)
VR関連で、ついでにもう少し書いておきます。VRシャフトには2種類あり、先端がギザギザの歯車状になっていて中央が割れているタイプ。これを「ローレット」と言います。もうひとつはシャフトが単なる丸棒のもので「ストレート」などと呼びます。この形状が違えば、同じ10kAのVRであっても、パーツとしては”まるで別物”と考えるべきでしょう。というのは、使えるツマミ(ノブ)が違うから。
VRを買ったときには、まず先端を見るくせを付けましょう。それからツマミを買えば間違いはありません。ローレットのツマミは内側にギザギザが切ってあるのですぐにわかります。値段も比較的安い。ストレート用のツマミにはギザギザが無く、横腹あたりにネジがあります(六角ネジが多いです)。こちらは良いデザインの製品もたくさんある代わりに、1個500円なんていうのもザラです。
ローレットのVRは、たとえシャフトが長すぎでも切れません。ま、極端に長ければ、切ってストレートとして使えますが。ストレートの方は好みの長さまで切り詰められます。で、切り方。万力(バイス)でシャフト先端をがっちりと固定し、金ノコで切ります。このとき、絶対にVR本体側を固定して切ってはいけません。振動でVR内部が壊れます(これは必ずそうなるので怖いですよ)。以上、自作ひとくちコラムでした。
極端に言って、配線が正しい場所に、とりあえずでも「くっついて」いれば、そのときだけなら機材は動作します。ホリエモンだって逮捕されるまでは実業家でしたし、ケチタニは虚業なのがバレていないから今でも社長です(ちょっと違う?)。そんな危ない橋を渡らないためにも、まずは正しいハンダ付け、その2。VRやジャックの端子には小さな穴があいています。「ここに通してからハンダ付けして」という意味なのは誰にでもわかりますが、あなたは実行していますか? 端子に線材をペチョっと貼り付けて済ませていませんか? たしかに、下に書く、基板動作確認の仮付け(バラック組み)なら、そのほうが便利です。でも長年使う機材だと、ペチョ付けのハンダは振動で取れてしまう危険が大きく、絶対にやってはいけません。
正しいハンダ付けとは、右図のようなもの。まず線材の被服を2センチ以上剥き、きれいに硬く縒(よ)っておきます。これを端子の穴に通し、線材がバラけないようにピンセットで引っ張りながら、端子にかたく巻きつけます。必ず一回り以上巻きつけます。この状態で配線材を引っ張っても簡単には取れなくします。そうした後に、端子と配線材すべてを覆うようにハンダ付け。はみ出した線材は、なるべく短く切ってしまいます。
この方法でハンダ付けされた機材は「一生モノ」と言っていいでしょう。ただ欠点もあって、間違えてハンダ付けしたときには修正がききません。フェイルセーフで行くなら、配線材の長さをいつもより3センチほど長くしておいて、間違えたときにはハンダ付け部分からスパッと切って、もう一度やり直せるようにしておきます。プロはそうしています。ケース内に実装する前に、完成した基板の動作チェックをしておけば安心。Fazz Factually では右のような感じになります。クリックすれば写真は大きくなりますので、ジャック周りなど参考にしてください。アース(黒い配線)の引き回しがケース実装時とちょっと違いますし、フットスイッチを使わず、エフェクトは常にオンです。
配線が何色あるか見てください。9色使っていますね。実装時も同じです。このマシン、基板こそ簡単ですがVR周りの配線が込み入っていて、結線の間違いが多発しそうです。そうなってからアセるより最初から間違いにくくしておくべきです。米国製エフェクタのように、黄色の線だけで済ます、なんていう手抜きは絶対に無理です。
電気街の線材屋では、9色どころか20色くらいのビニール被覆線を売っています。また、ハギレのような線材で数十色の線材が袋に入ったものもあります(ほとんどがマルチケーブルをバラした中身)。これは安いので買っておくべきでしょう。
バラックで組むときには、ハンダ付けは「付いていればいい」ので、上の図のような”巻き付け”は不要。逆に、巻き付けるとバラすときに大難航しますよ。一般に、ケース実装時よりもバラック組のほうがノイズは多くなります。ジーといったノイズです。基板や配線がまったくシールドされていないためで、蛍光灯などを近づけてみてノイズが多くなるようなら心配はありません。シールド不完全のノイズだと確認できるからです。
2.結線図
左側が Fazz Factually 、右側が FZ-1 の結線図です。それぞれクリックすると実用的な大きさになります。配線を直線で描くかスプラインで描くかは私の気分によりますので気にしないでください。
これらの図の示すところは、言うまでもなく「どことどこをつなぐか」だけ。その他の要素、たとえば各配線材の長さなどは完全に無視されています。図では短いのに、実際は長い、なんていうことは普通です。また、配線を「どう引き回すか」も表わされていません。図では基板の上を通っている線でも、実際には横をすり抜けたりします。あくまでも配線のための「めやす」です。
右の FZ-1 には「*」印がいくつかあります。これらは3Vバージョンのときにだけ配線する箇所で(LEDも)、1.5Vバージョンでは配線しません。余計なことを書きましょう。1970年代あたりまでの雑誌製作記事には「実体配線図」なるものが載っていました。1950年代に始まったようです。これが多い雑誌は売れるので、後期にはほとんど全部の雑誌で、全部の製作物に実体配線図を付けていました。完成した機材の内部を、配線はもちろんパーツの形からシャーシの光り方まで、忠実にイラストにしたものです。初心者にはとっつきやすいものの、これに頼っていると、いつまで経っても回路図を読む気にならず、うまく動かない場合は、(図面をただコピーしているだけなので)どうにも対処のしようがなくなる功罪併せ持った図面でした。 その実体配線図は誰が描いていたか? 電気の知識というか、自分で作れなければツボをおさえて描けないので、雑誌の編集担当が徹夜で描いていました(後期にはセミプロも現れますが)。ということは、当時の製作記事の編集さんは、みんな自作の技術を持っていた! だから記事のクォリティが高かったのだと思います。それに比べて昨今の音楽雑誌に載ってる製作記事は・・・・・。
3.結線の方法
まず、基板と関係ない結線から済ませてしまいます。FZ-1ではジャックとスイッチをつなぐ線などしかありませんが、Fazz Factually だとVR間の線がたくさんあります。ハンダ付けは「後で見直せばいい」ではなく、一発勝負でやってください。注意するのは、基板からの線もつながる箇所です。たとえば Fazz Factually の「DRIVE」VRでCの線が入る端子などです。ここはまだハンダ付けせず、「COMP」からの線も端子の穴に通さないでおき、基板からの線といっしょに縒ってハンダ付けします。そうしないと片方の線をペチョっと付けるだけになってしまいますから。
配線の色の使い分けは、隣り合った端子には違う色を使う、程度でいいでしょう。本来ならある程度の規則がありますが。たとえば”アースには黒を使う”といった常識です。FZ-1でいえば、ジャックのアース端子につながる線はすべて黒、Fazz Factually なら、「VOL」VRに行っているGNDという線と、それにつながるすべての線、さらに「IN」ジャックのアース端子につながる線は黒、ということになります。ついでに言えば、+電源は赤、−電源は白、信号線で入力は黄色、出力は緑、なんて決まっています。もちろん守らなくても法律には触れません。(この色使いはアンプやテレビなど弱電と呼ばれる分野での話です。配電盤など強電分野ではアースは緑になります)次に基板に配線材をハンダ付け。基板から線材がモヤシのように生えている状態にします。各線の長さは余裕をみて10センチくらいにしておきましょう。長ければ切れますが短くても継ぎ足せませんから。基板には使わない穴もあるので(別の結線をするときのためです)、必要な穴からだけ線を生やします。線材の色は、慣れないうちは気にしなくてもいいでしょう。隣り合った穴から出る線は違う色にする、だけを守ってください。本当は、その線がどこにつながれるかで決めます。つまり、さっき例に挙げた「DRIVE」VRに行く線なら、同時にハンダ付けされる「DRIVE」と「COMP」の渡り線と同じ色にします。こうすれば、どことどこがつながっているか一目瞭然。
なお、基板に線をハンダ付けする要領は、線材の皮を5〜10ミリむいて、たくさんある細い線をまとめてきつくよじります。すぐにバラバラになるのはNG。細い線が1本も漏れ出さないように基板の穴に通してからハンダ付け。安全を考えるなら、よじった線を「ハンダあげ」しておけば万全ですが、この方法は別の機会に。
基板へのハンダ付けは抵抗リード線の場合とまったく同じです。終わったらなるべく短く切っておくのも同じです。4.配線の引き回しなど
普通のエフェクタなら、基板はビスやジャックなどでケースに固定されるため、基板の取付位置は決まっているため、指定位置に基板を固定してから、線材を配線先にハンダ付けします。FZ-1の基板はビスではありませんが「超強力両面テープ」でケースに固定する仕様なので、ビス止めと同じ要領で配線してください。(ここで使う両面テープは凹凸面にも使える、間にスポンジなどが入った製品のみ。ナイスタックは不可です。じゅうたん用、室外用が適しています)
Fazz Factually の基板はケース内に固定しません(スペースがあれば両面テープなどで固定も可)。動作確認後に、基板全体をビニールテープで巻いてケースに押し込む、そんなつもりで設計しました。「STAB」VRと「IN」ジャックの間あたりに押し込むと、電池の収納がうまくいくはずです。配線の引き回しは、長からず短からず、にします。つまり、配線後に余った線があちこち無駄に走り回るのはダメ(ヤフオクあたりの自作エフェクタに多い)。といって、長さがギリギリで、突っ張っているようなのはもっとNG。そして、可能な箇所では配線がケース面に沿うようにします。この辺のテクニックは経験からしか学べませんし、上手な人の配線を見るまでわかりません。とりあえずは「正確第一」に徹してください。
ちゃん鳴るための条件は、ただひとつ「全部が正しく作られている」ことだけ。鳴らない条件は星の数ほどあって、「1箇所またはそれ以上、間違っている」ことと、「電池が入っていない」(かなり多いです!)こと。うまく鳴れば完成です。鳴らなかった場合は、その場で考えるのではなく、一晩経ってから見直すことをお勧めします。ついイレ込んで徹夜作業をしがちですけれど、経験から言って、興奮しながらの作業は疲れるだけで結果は出ません。やればやるだけドツボです。
ここでは「鳴った!」として話を進めましょう。Fazz Factually の基板は、底面はもちろんゲルマ・トランジスタのカンまで、全体をテープでぐるぐる巻きにして絶縁します。そして定位置に押し込みます。押し込むと言っても、やわらかくフィットする感じで。振動で動きそうならガムテープなどで固定しても構いません。006P電池は時としてショートの原因になります。金属製ですから。VRの上に乗せる手もありますが、その際にはVR端子と接触しないようプラスティック板などを挟む必要があります。簡単な解決法は電池ホルダを使うこと。ホルダは”絶縁体”として使うので、固定する必要はありません。
FZ-1で注意することは、ケースにTS-1Sを使った場合、フットスイッチの接点が底板に接触しそうになることです。念のため、スイッチの当たりそうな底面にガムテープを貼っておきましょう。基板と電池ホルダは強力両面テープで固定します(基板では、テープを絶縁体としても使っています)。やわなテープだと、すぐに剥がれてしまい何度も貼りなおすことに。。。スコッチか3Mの「超強力」がお勧めです。
手持ちパーツと結線図で、パーツの端子位置が違うこともあります。主にジャックで頭をひねった経験がある人も多いのでは? ここではVRとジャックの端子位置について説明します。
VRの3個の端子は右図のようになっています。サイズやメーカーが違っても、この配列は変わりません。シャフトを回すと2番端子が1と3の間を動き、フルテンでは2番が3番とショートし、逆に絞りきると2番は1番とショートします。もしわからなくなったらVRをフルテンにし、テスタで当たれば3番がわかります。
多くの回路図では、VR記号の傍らに1、2、3の番号が書いてあります。それはこの端子番号です。外国の回路図だと、3の代わりに「CW」、1の代わりに「CCW」となっていることがあります。それぞれ「時計回り」「反時計回り」のことで、よくわかるというか、ややこしいというか。ジャックの接点は一筋縄ではいきません。メーカーによって、また型番によって、いろんなバリエーションがあるからです。まず右図の下の方にあるプラグの絵を見てください。先端部分を「チップ」、アースの部分を「スリーブ」といいます。絵は楽器に使う”モノラル・プラグ”なので、接点はこの2つです。ついでながら、ステレオ・プラグだとチップとスリーブの間に「リング」があり、ヘッドフォンなどでは「チップ=左信号」「リング=右信号」「スリーブ=左右共通アース」の使い分けになっています。これはミニプラグでも同じです。
さて本題のジャック。基本的には図に描いた3種類があります。もちろん”何でもアリ”の世界なので、これ以外のタイプがあっても不思議ではありませんが。そして、端子の配列や場所が違うものもたくさんあります。この絵にとらわれないでくださいね。
*モノラルSW付*
チップにつながる端子(図ではA)とアースがあります。この2つだけでも充分使えますが、Bというスイッチ端子があって、これがなかなか便利。Bは”プラグが差さっていないとき”にはAにつながっています。プラグが差さるとBはどこにもつながりません。どう便利? はい、このジャックをエフェクタの入力に使う場合、Bをアースに接続しておきます。そうするとプラグが差さっていない(つまり無信号)のときには、回路に行くAの端子がアースに落ち、回路に信号を一切伝えずノイズを最小に抑えます。
この他、Bの端子は様々に使え、そのジャックにプラグが差さっていないときに他のジャックからの信号を回路につなげたりもできます。*ステレオ*
文字通りステレオ・プラグ用のジャックですが、その他の使い方もできます。本来のステレオ用途のときには、Aはチップに、Bはリングにつながります。アースはアースです(変な説明?)。これでステレオ・ヘッドフォンの出力ができます。
このジャックにモノラル・プラグを差すとどうなるでしょう? チップはAにつながるのは当然として、Bはプラグのどこに? スリーブにつながるのです。スリーブはケースのアース(ジャックのアースでもある)につながっていますから、つまり「プラグを差すとCはアースとつながる」ことになります。これを利用して、電池スナップの片方の線(通常は黒。FZ-1なら赤)をCにつないでおけば、プラグを差すとパワー・オン!になるわけです。
なお、以上の説明は「絶縁型」ジャックだとうまく行きません。絶縁型は取付け穴も大きいので、エフェクタでは一切使わない方が賢明です(一部、絶縁型をありがたがる無意味な風潮もあるようですが)。*ステレオSW付*
端子が9個もあって見るだけでもクラクラしそうなタイプ。しかし端子が多いだけに「万能型」でもあります。上の2種類「モノラルSW付」「ステレオ」も、このタイプで置き換え可能です。
チップにつながるA、リングに(モノラル・プラグならスリーブに)つながるCがあります。実はこの2つだけが”ジャックの”端子です。問題は上下に3個ずつある端子。これらは2組のスイッチなのです。機能としては6pのフットスイッチとなんら変わりません。ただ、足で踏む代わりにプラグの抜き差しで状態が変わります。
図でいえば「D-E-F」が一組のスイッチ、「G-H-I」がもう一組で、プラグが差さっていないときには「D-E」「G-H」がそれぞれ接続しています(上と下で端子の方向が逆になるので注意)。プラグが差さると「D-F」「G-I」がオンします。
FZ-1の結線図では出力ジャック(AMP表示)にこのジャックを使い、パワーのオン/オフをさせています。機能としては Fazz Factually の出力ジャック(OUT)とまったく同じです。また、ただのステレオ・ジャックに置き換えることもできます。考えてみてください。*迷ったら自分で確かめよう*
上の図の端子配列は、あくまでも市場に多く流通しているであろうタイプを例にしたものです。自分のジャックが常に完全に同じとは限りません。少しでも「あやしいな」と思ったら、使う前に必ずチェックしてください。
両端にプラグが付いたシールド線(ふつうに使うケーブルです)をチェックするジャックに差し、テスタでチップとスリーブがどの端子につながるかを見るだけです。未使用のプラグがあればもっと簡単。裸にしてジャックに差し、テスタで導通を調べます。テスタを持っていない人は、、、自作には必需品なので、この際買ってください。アナログ・デジタルどちらでも使えます。
以上、ここでは FZ-1 と Fazz Factually を中心にパーツの知識、工作の方法を書きました。どちらもエフェクタ自作全体から見ればほんの一部に過ぎません。気が向いたら書き足していきます。期待しないで待っていてください。
自作関係の掲示板を読んでいると、自分であまり考えずに「知っている方、教えてください」にしてしまう人が多いように感じます。自分で考え、自分で試すことが自作の基本ではないでしょうか。考えるのが面倒なら(はい、私です)自分の手で、まず「やってみる」。そうして得た知識・経験は、本で百回読んだゴタクより、ずっと役に立ちますよ。
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