原音の忠実再現

そもそも「原音」とは何でしょう? MTR以前の一発録音ではスタジオで鳴っていた音である、といえるかもしれません。しかしマスタリングの段階でエフェクトをかけることもありましたから、言い切るのは無理です。ましてMTR以後になると、録音された音と完成時の音ではまるで別物の場合もあります。つまり録音段階の音は永遠に不明、ということです。
私たちがLP盤からかすかに推測できるのは、トラックダウン後のマスターテープの音だけです。現存のLPではその上にプレス段階のノイズ(および音質変化)、盤の保存状態によるスクラッチ等が加わります。これらは再生時にクリックやポップといったノイズになります。DISK DIGでは、まことに頼りないながら「推測されるマスターテープの音」を再現することを目標にしています。
手法としては最適なノイズ除去です。これを過度に行なうと音質変化につながります。音質を損なわずにノイズを除去するには、目的音とノイズ成分を分離しなければいけません。さらに、マスターテープに入っていたヒスノイズまで除去すべきではありません。技術的には除去すべきノイズの選別と分離がもっとも難しいところです。

実際には、かなりの割合で不要ノイズの除去に成功しています。しかし、どのような方法でも取り切れないノイズについては、なるべく目立たないように処理するにとどめています。
特に苦しいのは曲のエンディング部分等の小音量部です。S/N比でも0dBにきわめて近く、ノイズ分離はほぼ不可能です。この部分はスピーカでは「聴こえない」ほどの個所であっても、大音量にしたヘッドフォンでは聴こえます。リマスタリングでは楽音に聴感上影響するEQはいっさい使わない方針ですが、例外として曲のリリース部分だけには使っています。
具体的な方法論や使用ツールについては盤によっても違い、また企業秘密でもありますので、ここでは主に3種類のサウンドエディットツールと多数のプラグインを使っているとだけお知らせしておきます。

リマスタリング・システム

簡単に言えば、LP盤をできるだけクリーニングしてから再生し、A/Dしてからハードディスクに取り込み、エディット後、CD-Rディスクに焼きつける、となります。
以下、使用機材を紹介します。

●レコードプレーヤ  @Technics SL-1200MK3  ATechnics SL-2000
●カートリッジ  @audio-technica AT-ML170/OCC  Aaudio-technica AT33ML/OCC
●MC Head Amp  自作 2SK130A 4Para
●EQユニット  @自作 NJM2114D使用NFBタイプ  A自作 LM375使用NFBタイプ
●フェーダーBOX 自作 NJM5532DD PGプラスティックStereo Fader
●A/Dユニット  canopus AD-Link
●CPU取り込みポート  canopus DA Port USB
●メインCPU  Intel Core i7
●メインCD-RWユニット  PlexWriter12/10/32A
●CD-R Recordingソフト  WaveLab 5
●メインモニタ  KEF model104ab
●メインHeadphoneモニタ  audio-technica ATH-M9X
●リファレンスCDプレーヤ  marantz CD-67mkU
●確認用CD-Rレコーダ  TASCAM CD-RW5000

複数ある機材は音源によって使い分けます。
スクラッチの多い盤などではA/D後、いったんDATに録音し、状態を確認してからハードディスクに取り込みます。使用DATはTASCAM DA-20MKU、TASCAM DA-30MKUとSONY D8です。

CD-Rディスク

信頼度の面と、なるべく多くのCDプレーヤで再生可能にするため、ほとんどの音源に太陽誘電(That'sブランドおよびOEM品)のディスクを使用しています。しかしこのメーカーの製品は、「特に良い音」とはいえません(決して悪くはありませんが)。信頼度等をあまり考慮せず音質最優先に考えると台湾製ディスクに良い製品がたくさんあります。RitecやFornet等です。私たちは秋葉原の専門店で常にリサーチすると同時に台湾の友人から情報とサンプルを得て、音源にもっとも合ったディスクを使用しています。
どの音源にどのメーカーのディスクを使うかはお任せいただきたいところですが、もしご希望の製品がありましたらご相談ください。CD-Rドライブは、上記Plextorの他にSONY CRX100Eがあります。書き込み速度はx4以上です。TASCAM CD-RW5000による等速書き込みは御容赦ください。

 

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